2016年6月23日木曜日

長い第2ラウンドが始まった

 老母が変だなぁとは思ってはいたが、アタシは猿になって
やり過ごそうとしていた。猿と言っても日光の猿だ。

「見ざる、言わざる、聞かざる」
 



一番、最初に「へ?」と思ったのはいつ頃だろう?

 

少なくとも1年ほどは経つ。

 

老人ホームの入居者のAさんのお嬢さん(70歳)と
Bさんの息子さん(50歳)が同級生で
久しぶりにここで再会したのだと言い張ったのだ。

 

老母の話は「日常生活における不平不満(現在進行形)」か
「過去経験した不平不満(過去完了進行形)」のどちらかなんだが

 

どちらか言えば、聞いているアタシには「過去完了進行形」の
今まで何万回も繰り返されてきた同じ話の方が辛い。

 

「それ聞いたから」と遮断しても、話は止まないのだ。

 

この2パターンで繰り広げられる話しかないので、
アタシは適当に相槌を打っては聞き流す。

 

しかし、そのA娘さんとB息子さんの話は「ちょっと待った!」をかけた。

 

同級生のはずがないだろーが!?と指摘したのだ。

 

「だって、同級生なんだから仕方ないじゃない!」と老母はブチ切れていた。

 

しかし、翌日には忘れてしまったのかな?と思える様子だったので、
その時は「なんだ、婆さんの勘違いか」という風に思い込みたくて、
それ以上は何も触れなかった。

 

それからも「不思議に思う」話は結構あったんだが、それを広げてしまうと

ものすごくめんどくさいような気がして「不思議」もスルーしていた。

何故なら「そこまで、しっかりする!?」ってくらい重箱の隅を
つつき出すことが日常だったので「相当しっかりしている」と
むしろ苦々しく思っていたのだ。

 

例えば、老母は何故かバナナに執着するのだが、それを差し入れると必ず

「それはいくらで買ったのか?」と問い
正直に「148円だったけど?」と答えるとキレるのだ。

 

「なんで98円で買わないの?人の金だと思って!!(怒)」

 

あのぉ〜、そのバナナ、ウチのダンナの金で払って来ましたけど?

 

まあ、何をやっても、何をしても、ひとつひとつに丁寧なダメ出しがある。

 

そんな風だから「あれ?なんか変じゃね?」と思っても、
めんどくささが勝るので、すぐに思考がこうなった。

 

「大丈夫じゃね?気のせい、気のせい・・・」

 

そんな中、最近、介護保険の認定調査が入った。

 

認定調査員さんにホームのナースがこう言ってくれる。

 

「毎日、注射は打っているんですが、打ったにもかかわらず
『今日は注射まだなの?』っておっしゃることが頻繁にあります」

 

一瞬、気が遠くなりそうだった。

 

「ボケとるやないけ〜〜〜!!!???」

 

ああ、あれもそれもこれも、アタシの気のせいではなかったのか・・・。

 

姉に「長男(アタシの兄)がゴールデンウィーク明けに
家(母の住んでいた家)に連れていってくれたのよ〜♪」と話したらしく
姉から確認の電話が入ったことがあるのだ。

 

あのぉ〜?兄はゴールデンウィークどころか、正月以来、来てもいませんが?

 

そして、ついに昨日、こうなった。

 

「お中元を贈らないといけないから、手配しなさい」

 

はいはい。どこにお贈りすれば?

 

「妹の○子ちゃんと、長男と、それから・・・」

 

○子叔母さんは贈るけど、長男(アタシの兄)には要らなくね?
なんで、そんな手間をアイツのためにアタシが!?)とご進言すると
老母はこう言ったのだ。

 

「(嫁の)△子さんが病気でしょうが!!(ホントにりんこは思いやりがない!)」

 

めまいがした。確かにめまいがした。

 

△子さんは確かに病気なんだが、老母の弟の嫁(80歳)なのだ。

 

長男の嫁は全く違う名まえで、もちろん元気である。

 

もう認めざるを得ない。

 

この人は呆けている!

 

ナースが教えてくれた。

 

「そうそう、りんこさん、お母さまの健康診断の結果が出たのを
 
お渡しするのを失念していました。お母さま、よかったですね。
 
(内臓系は)どっこも悪くないですよ!」

 

(注:母はPSPという国指定難病であるが、自力歩行が出来ないだけ。
それでも第1ラウンドとも呼べるこの10年余り、
支える方の身内(姉とアタシ)はかなりきつかった)

 

長い第2ラウンドの幕が切って落とされたのだ。
 
 
 
 
 

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