2016年3月10日木曜日

3.11震災となると思い出す、アタシの今際の際の話

 2011年の311日のあの日、アタシは羽田空港にいた。





飛行機から降り立ったばかりで感じた揺れは「強烈な船酔い」かと思ったが、すぐに

大変なことが起きていると察知した。

何故なら、窓の向こうで君津のコンビナートが爆発しているのが見えたからだ。

 

そのまま羽田に留め置かれることになった。

羽田には一宿一飯の恩義があるアタシだが、さすが空港だけあって毛布やら非常食やらは

充実しており、寒くも暑くもなく野宿としては快適ランクAクラスだろう。

 

ただ、今ほどスマホの環境も整っておらず、テレビ等もないので、情報が全く入って来なかった。津波が来て、更に原発が爆発しているなんてことは全く知らなかったのだ。

 

ただ日本が「異常」なことになっていることは何となくだが理解していた。

 

携帯、繋がらず。

家族と1週間ほど離れていたアタシは余計に家族のスケジュールがどうなっているのかが

把握できておらず、何処に居て、無事なのかもその時点では全くわからなかったのだ。

 

使える連絡手段は公衆電話だけだ。

長蛇の列に並ぶ。

 

娘は当時高校生だったので、この時間帯は間違いなく学校にいるだろう。

おやぢは会社だろう。

 

息子は?息子は家にいるんかいな?

とにかく、自宅にかけてみる。

 

すると息子が出やがった。

 

「津波で仙台がひどいことになっている」と言われたが、仙台に海という意識がなかったので全然、ピンと来ない、大ばか者だ、あたしゃ。

 

息子は続けてこう言った。

「たまたま彼女が来ているが、帰る手段がないので、今夜、ウチに泊めてもいい?」

 

いいも悪いも、すべての電車が止まっているのだから、仕方なかろう。

 

その時も羽田はひどい余震に見舞われていて、時々、女性の悲鳴が上がっていた。

 

「もう、これで最期かも」とアタシは思っていた。

 

息子と話すのも最期になるかもと覚悟したのだ。

 

とにかく息子に何か伝えなければならない。

それでアタシはこう言ったのだ。

 

「あのね、彼女が泊まるなら、パンツの替えがないだろうから、お母さんのタンスの

上から2番目の引き出しにベビーピンクのサテンの袋に入った『勝負パンツ』が

30枚くらい入っているから、どれでも好きなものを使っていいからって、彼女に伝えて!」

 

「もしもし、聞いてんの?2番目の引き出しだからね!

お母さんがOL時代に千趣会(現ベルメゾン)で集めてた、未使用の勝負パンツだから!

30年前とは言え、全部、使ってないヤツだから!」

 

そこで電話は切れた。

 

自分でも思う。

 

今際の際の言葉が、人生を賭けた最期の言葉が「千趣会の勝負パンツ」。

 

つくづくアタシはつくづくだよ・・・。

 

 

 

 

6 件のコメント:

  1. さすが、りん子さん。そんなセリフなかなか思いつかないですよ。思わず吹き出してしまいました。
    あの日の事は私も忘れられません。職場が自宅まで徒歩圏内だったので、走って家に帰って、無事な子供たちの顔を見て、どれだけホッとした事か。
    あの時、6年生と1年生だった子供たちは高2と中1になり、立派な深海魚となってますが、成績にさえ目をつむれば(つむっていいのか?)毎日、楽しく学校生活を送っていて。
    あの時青ざめて家に駆け付けた事を思えば、幸せな毎日なのだなあと改めて思いました。
    それにしても、私がりん子さんの立場だったら、息子に何て言うんだろうと考えました。食欲魔人の一家なので、取りあえず食べ物の事を心配するのかも(笑)

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    1. そうだよね、元気なら何でもいいって感謝すべきことなんだよね〜。
      すぐ忘れちゃうけど。
      しっかし、最期って意識があんのに、なんであたしゃ、パンツの話を熱く語ったのか、あまりに情けなくて、まだ死ねない!

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  2. ゼンマイ侍ジャパン2016年3月10日 23:04

    こんばんは。先日マイナビさまのイベントに出席させていただきました。とても楽しかったです!!まだ余韻が残っています。久しぶりに大笑いさせて頂きました。元気を頂きました。

    パンツの話。多分人間極限状態に置かれると、直視しないように防衛反応が起こり、そういうことがあると聞いたことがあります。
    津波が来た時も「津波が来る」ということを認めたくなくて、部屋の掃除をしていたら津波が来てしまった、という検証をそのころNHKでやっていました。

    ちょっとわかる気がしますね。

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    1. ゼンマイ侍ジャパンちゃん(おもろいHNだね!)
      マイナビ、いらしてくれてありがとねー!!
      笑える講演を目指したので、大変ありがたいお言葉に
      救われます

      そっか、極限状態だと防衛反応が起きるんですね?
      でもなぁ、アタシは最愛の息子に遺す言葉が
      「パンツ」かと思うと、あまりの教養のなさを
      自分自身で憂うのでございます。
      もっと、違うのがよかったよー!!

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  3. 話題そのものにも笑えましたが、勝負パンツ30枚もあるんですね! 30年前というと20代ですよね。それだけ勝負パンツが必要だと賭けられる年齢、20代! 若い。 私も今、こんな年齢になって、「勝負パンツ」の必要な「勝負」って、人生あと何回残っているんだろうか、と考えます。 それより、心配なのはこれぞ勝負!!ってときに、勝負パンツはくのを忘れて、いつものでかパンを履いて臨んでしまいそうな自分がいます。 例えば、救急車で運ばれ、イケメン医師にでかパンを見られてしまうとか。

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    1. まきみきママちゃん
      「勝負パンツ」ではなく正しくは「勝負すらできなかったパンツ」な。
      救急車はまじヤバイらしいよ。
      そういうときに限って、ゴムの伸びたパンツやら
      背中部分が穴の開きそうなブラだったりするらしい。
      ユーミンのディスティニーを彷彿とさせる話よね〜(泣)

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